令和5年12月29日(金)約5年間の染色期間を振り返り、絞り染めの好きなところを語る

こんにちは。1年が終わりそうです。
誰かに向けた手紙のように書く、今年最後の文章になります。以前からの引き続きのスタイルで、しぼり染め制作に関することを1年間、月4回ペースで書いてきました。
絞りを自分で染めるようになってから5年間が経過しました。5年って節目っぽいじゃないですか。手短かにですが振り返ってご報告しますね。

2018年 染色について右も左もわからない状態から、自作の絞りの布を染めはじめる。
2019〜2021年 長く使えるものを染めたいので堅牢な染料で絞りを染めると同時に、自分の絞りにフィットする色合いを探す。
2020年〜2022年 化学染料と天然染料のどちらにも軸足が取れず悩む。
2023年 化学染料と天然染料を対立させるような考え方をやめる。食べ物や植物など自然の色を良く見て、観察した結果を染め色に活かす。

だいたいこんな感じでした。5年が10行にまとまりましたよ、スマホで見ると。

私は日本の絞りの技法を組み合わせて模様をデザインしていますが、今年はとくに色の話を書くことが多かったです。
どうしても世の中の流れに左右されて色というものを捉えてしまう部分もあるのですが、なるべく我慢してます。本当になるべくですが、いちいち「なぜ」という疑問をもつようにしてきました。

あ、ところで、今、一番気になることは染める前の「白生地」のことです。
染め方がだんだんわかってきたので今度は布を試しています。どんな素材で、どんな紡ぎ方で、どんな織り方でできた布かによって絞りの効果も変わってくるし、用途があるものは触り心地・着心地を大事にしていきたいからです。

長くなってきたので、少し終わりに向けていきましょう。
これからも糸で縫って絞る「縫い絞り」を続けていきたいと思います。
「縫い絞りで個人的に好きなポイント」をお話して終わりにしますね。

縫い絞りは他の模様染めに比べ、染める前にいったん、わけのわからない形状になります。
知らずに見たら、ちょっとした彫刻作品か何かかな?と感じそうな佇まいです。

平らな模様を下描きしたときには予測がつききっていなかった「へんで、ややこしい物体」を染めて、乾いたら糸を切り、アイロンで伸ばします。
独特のシワが残りますが「まあ、布だな」と思える平面に戻り、へんな物体だった事実は残りません。
良く見ると、針の通った穴が点々としていて、かすかなシワとともに染めのプロセスを物語ります。
そこが愛しいな、と感じます。

また、古代から続く模様染めには纐纈(コウケチ/絞り染め)、夾纈(キョウケチ/模様に切りぬいた板で挟む染め)、臈纈(ロウケチ/ロウで絵を描いて染める)という3種類があり、どれも防染(ぼうせん)といって「染まらないところを作る」ことで模様を作ります。
板やロウはあきらかに布とは異素材なのに、絞りは布と同じ原料の糸を使って防染をします。そこが私の心を掴んでいます。
だいぶカジュアルに言えば「なんで、糸でくくることで染まらなくなるの?おもしろ~!」という思いがあります。布って糸で出来てるんですよ。なのに、面白くないですか……!?
ちょっと数年やっただけで知識を増やしてそれを当たり前にしていってしまうのが大人の人間というものです。だから、こういう調子でちょっとずつ、自分の「当たり前の知識」を外して考えています。そのほうが色んな面白いことに繋がって行く気がしているからです。

それでは今年もありがとうございました。
2024年へ温かい時間が流れていきますように。

しぼりぞめこ