令和6年1月2日(火)今年の抱負、これから作るしぼり模様についてめっちゃザックリと語る

去年の心残りとして「もっと多くのしぼり模様デザインを作れたら良かったなー」という気持ちがあります。そういう不満をあげたらきりがなく、制作が継続出来ることがすでに幸せな話ではあるのですが。
小さな布だけでなく大きな布も染めたいと思い、それがなんとか実行できたのがとても良かったポイントでした。
ただ、絞り作業に時間がかかるので、1年でできることは本当に限られているなと思いましたね。

私の場合、絞り手のお仕事から始めたせいか、染め工程よりも絞り工程のほうに重心があります。
技法の組み合わせ方を工夫することによって、「絞り」という表現方法の魅力をなるべく強く出したいんですよね。
染め色は、絞り模様の魅力を引き出すもの、絞り模様に説得力や伝播力を与えるものとして考えています。

今年1年でやりきれるとは思えませんが、今回の文章では「この1年〜数年のうちにやっていきたい模様」をザックリと書いてみたいと思います。


絞っていきたい模様の前提として、何の模様をつくるにせよ、ちょっと考えていることがあります。
日頃から、日本や世界の文様を色々と参考にしているのですが「吉祥文様」という昔からの日本のスタンダードがあります。
亀甲、七宝つなぎ、鱗(うろこ)、紗綾(さや)型などですが
良いことが続くようにとか、魔除けなどの意味がそれぞれの文様くっついています。
ものすごく大まかに言って「無事に長く生きられることは、めでたい」「農作物や海産物がよくとれることは、めでたい」「子孫が繁栄し、人間の歴史が続いてゆくことは、めでたい」というような、人間の種(しゅ)としての非常に根本的な幸福についての願いがこめられていると感じます。
今までにたくさんの文様を見てみて、その魅力の根っこを一言にすれば「生命力」だと思いました。文様の「生命感」と言うほうが良いのかもしれません。
アイルランドアラン諸島に伝わる、釣り人のセーターの文様などもそうです。

大きくみていけば文様は全て、多かれ少なかれ「人が生きるうえでの縁起を担いでいる」と感じます。
吉祥文様にかかわらず、具体的/抽象的な文様モチーフは全て、生命に繋がるようにデザインされているのではないか?というのが私の考えです。


日本の絞り染めは、鶴や亀、花鳥風月のような絵模様や幾何学文様などが昔から作られてきました。
資料を見る限り、近代以降、友禅の技法が盛んになってから絞り染めは下火になり、技術の向上と引き換えに、作られる文様のタイプはだいぶ狭くなっていったように見えます。なので、絞りの模様には、まだまだ試す可能性のあるデザインが数多くあると思います。

ヨーロッパのレース刺繍の模様や、国内外の織物、インドのバティックなど、絞り染め以外の染織の文様を参考に絞り染めを試していきたいです。

自分が絞りで再現したら面白いと思う模様に吉祥の意味を盛り込んでいけば、人に愛される模様が作れるのではないか?と想像しています。
(というよりも、絞りは模様の際〈きわ〉の面白さがある表現技法なので、それだけでも文様に生命感を与えている可能性があるな…という気もしています)

ひとつは去年から続けているストライプシリーズに加えて、更紗文様、唐草文様、毛筆のひらがな、古い陶器の絵付けなどからもインスピレーションを得て、絞り染めに活かしていこうと思います。

今年もよろしくお願いします。