令和3年7月15日(木)

絞り染めについての本を書いたデザイナーを発見してから2年くらい、うれしくなっている。三越の広告やPR紙の表紙絵など大量の仕事をのこした杉浦非水(1876〜1965)のことである。同時代の竹久夢二作品ほど抒情的ではないが自然物の丹念な観察をもとにした美しい大正ロマンの作風で、模様デザインの魅力的なところが夢二と似ている。「志ぼりの図案」という可愛らしい手描きの表紙の本は、2014年出版の「杉浦非水のデザイン」内に収録されており[絞りは自然の色や形と関係がなくても技法の組み合わせと色の工夫によりそのデザインの面白さを表現できる]と論じていて、私はその視点にとても影響をうけている。非水の絞りへの強い思いがどこからきたのか知りたいと思うが、かわりに大正時代の前後を想像する。あさがお、さくらそう、つばき、おたまじゃくし、りす、白鳥。絞りのために花や鳥や動物からおこされた図案が愛らしい。鹿の子絞りをつかった点々の絵絞り。非水の図案はどれもこれも良いから、真似て絞って染めてみたくなる。