しぼり染めで模様をつくる 巻き上げ絞りの技法と、型染め作家・柚木沙弥郎の言葉

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これは、先月(2020年3月)作った絞り染めです。自分で考えた形を型紙におこし、縫い絞りをほどこし、天然染料で染めています。インド茜の根っこの3~4番液を煮出して使いました。

今回は、絞り染めで模様を作り始めるまでのことを書いてみます。
個人が自宅でできる手仕事、というテーマも含んでいるかもしれません。
このブログは絞りのことを書きたいと思って始めたのですが、染めることばかり書いていました。ずっと絞りについても書きたいと思っていて何故かなかなか書けていなかったので、うれしい。

このブログでは数ヶ月から1年(またはそれ以上)の過去を振り返って書くことが多いです。今回もまた、時系つきの説明が多くなり、読みづらいこともあるかと思いますが、お時間のあるときにお読みいただければと思います。


私が絞りを始めたのが、2017年9月。
産まれて3ヶ月のむすこを育てていた時に、以前からやってみたいと思っていた絞りを始めました。
絞り手という仕事の技術をつけるため、とある絞り染めの老舗の門を叩いたのです。受け入れてもらえるのかどうかが不安だったけれど、ありがたいご理解により運良く教えてもらうことができました。


そこから1年弱(正確には9ヶ月)の間、たったひとつの絞り技法に集中した修行をしました。着物が作れる一反は無理だったけれど、一丈(いちじょう)という約4メートルの布いちめんに描かれた模様を、ひたすら自宅で縫い絞り続けました。息子がまだ赤ん坊で良く寝ているころだったので多いときは1日4~6時間作業し、だいたい2ヶ月間かかっていました。
時にはむすこを横に寝せながらの指導になったけれど、先生はとても辛抱づよく教えてくださり、心底感謝しています。
その頃のことはまた今度書くつもりですが、ここでは割愛します。

 

私が手ほどきをうけた絞りの技法は「平縫い巻き上げ絞り」です。

写真の上→左下→下中央→右下の順序で絞り染めが出来上がります。

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かんたんに説明すると、模様の輪郭をひとつひとつ手縫い針と糸で縫ってから、糸をひいて絞るというものです。
輪郭にそって縫うことで色々なかたちを表せるので、多様な模様が作れることが特徴です。
(技法の名前は安藤宏子さんの本で調べました。細かな方法は、同著者の「絞り染め大全(誠文堂新光社)」という本に載っています。)


絞りができるようになったら、今度は自分で絞りを染めたいと思いました。翌年の2018年の6月のことです。
それまではプロの染めてくれる人がいたわけだけれど、自分で染めるとなると-ー。
模様のデザインから自前でする必要があります。染める布や絞る糸なども揃えなくてはなりません。
2ヶ月の間くらいは、模様は習った絞りの模様デザインを思い出し真似て、手書きの型紙をつくり、家にあった木綿の布に描きうつして絞りをしていました。復習もかねて、毎日続けることで技術を落とさないためにも。
それから『絞りノート』というものを作り、習ったことをもう一度書き留めながらひたすら絞りました。習ったことを書き終わると、新しく自分で調べたことやスケッチを書いていきました。

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写真は、現在5冊目になった絞りノートです。

 

次に、絞った布きれを自分で染められるかというハードルがありました。
絞った布は、やってみてわかったけれど、防染(白い部分を残すこと)ができなければ模様にはなりません。
染色は全くの未経験でしたので、身近な天然染料で実験したら、最初はやっぱり失敗しました。

その時のブログ記事はこちらです。

 

shiborizomeko.hateblo.jp

 

より専門的な本を探したりしてしばらく試作の小さな絞り布の染色を繰り返し、どうにか同じ年の夏の間にきちんと防染された模様が染められるようになりました。
今でも模様のつくりや布の種類、染料の種類によっては思い通りに染まらないこともありますが、どんどん経験していくしかなさそうです。

 

そしてやっと、自分の模様が作れそうなところまで来ました。今から1年半前の、2018年の秋になっていました。
始めは想像もしていませんでしたが、自分の模様をつくれるということが、その時はうれしく感じるようになっていました。
それは第一に絞り染めで生まれる模様があまりにも面白くて綺麗だと思っているからです。修行中はあらかじめデザインをされたものをきちんと絞ることに集中していたけれど、自分だけの模様を作れるのなら、さらに面白くなるかもしれないと思いました。
第二に、布に表す模様の技法として絞り染めがとても新鮮に感じられる時代に生きているのではないかと思うからです。
個人的にも、模様というものが好きだし。日本の着物の模様とか、イランの教会の連続模様とか、昔から好きです。

色々なスケッチを描き出し、草木、野菜、映画の衣装など、見るもの全て模様の参考にしようとしました。少し前に刺し子をしていたのもあり、昔から日本にある模様もたくさん参考にしました。

作っていた刺し子ふきんです。伝統模様で、左が柿の花、右が竹の模様です。
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こういう模様は見ているだけで心が落ち着きます。何故そういう気持ちになるのだろう。模様は面白いなと思います。


自分で模様を作り出しても、すぐにめざましいものはできませんでした。
絞りと染めの練習になるのであまり気にせず、ひとつのかたち(模様になる絞りのパーツ)を作りそれを規則的に繰り返すというシンプルなものを作り続けました。

その頃、2018年7月~2019年前半くらいまでに作っていた絞り染めはこんな感じです。
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全て巻き上げ絞りの技法のみで出来ています。その頃、絞りノートに書いていた感想は次のようなものでした。
「10月某日 楽しい。糸解きのときが味わえる。もようを自力で考え、縫う順序なども考え、試すのが大変。染料は木綿の場合、スレン染料が向いているようだ。天然染料は時間がかかるのだけど面白い。長い目で試していきたい。ただ、濃い色を得るのが大変。」

 

しかし、もっと自分らしいものがつくれないかな?と考えてもいました。
10月頃、涼しいなぁ、と思いながらたまたま市内の新しく出来た本屋に行った時、美術工芸関連のコーナーに柚木沙弥郎さんの作品集を見つけました。ぱらぱらと中をめくると自然光の下の写真がとても良い。日本民藝館で撮られ、編集された本でした。
(店主は柚木さんファンで、少しお話をしたけど良い人でした)

その本のタイトルは『柚木沙弥郎の染色 もようと色彩』

表紙
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裏側
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この本を買ったころは「あれ?模様って、そもそも何だろう…」とちょっとこんがらがって考えていました。

作品の写真はもちろんですが、柚木さんの『この本を手に取るすべての人へ』という文章がとても良く、家でゆっくりと読みました。悩みが晴れるような気がしました。

104ページ《模様とは何か》より引用
『…絵画を煎じつめたものが模様じゃないでしょうか』『模様とはどういうものかというと、柳先生がおっしゃるように、ある法則があって、それに則って、かつ自由なもの。』
(※柳先生=柳宗悦のこと)
とあります。少しむずかしいですが、生活のなかで得る躍動感から良い模様ができる、という内容が書かれていました。

105ページ《模様を生み出すには》より引用
『模様を生み出すにはうれしくなるよりしょうがない。わくわくしてなきゃ。そんな状態に自分がなれなきゃ生み出せないんです。そういう活力ですよ。エネルギー。しかたないからやるんじゃない。こっちからやらなきゃ。面白いなあと思って、そうすると色々出てくるんですよ。寝てる間に出てくるんです。夜明けに。四六時中考えていないとダメ。いろんなものがヒントになるわけ。』
『結局模様が美なんです。ものの本質としての生き生きとした部分を一番明瞭に切り出したのが模様。』
『はじめは好き嫌いでいいんですよ…(略)…初心者でも熟練した人でも、次第に向上します』

模様を生み出すにはうれしくなるよりしょうがないのだ

はじめは好き嫌いでいいのだ

どんな人も次第に向上する

という、柚木さんの言葉はわたしにとって春の光のように優しく(現実は秋だったけど…)疑問をといてくれた。緊張しなくてもいいよ、と言ってもらってるようでした。
もちろん、それも簡単なことではないのだろうけれど。

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柚木さんは型染めの作家です。何かで読みましたが、型を下書きなしにハサミで切ったりもするらしいです。自由で心地よく、のびやかな模様を作られてていて憧れます。
あんなふうには出来ないですが、私は絞り染めで優しく包まれるような模様がつくれたらなあと思いました。


柚木さんの本を読んだあとに、こんな模様を考えて絞りにとりかかりました。

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型紙を布に写しています

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縫っていきます


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全部絞ったところです


この模様を考えたのはある日の散歩中。

公園の木の枝の先の葉っぱがとても綺麗で、良くある大きな木の、良くある葉っぱだけれど、その枝の梢の先が何故か記憶に残りました。木の名前を知りたいと今は思うけれど、うっかり調べるのも忘れていてしまいました。シマトネリコという木が似ているような気がするけれどわかりません。
(連れていた一歳半の息子をそのとき抱いていたのか、ベビーカーにのせていたのかも覚えていません。)

相似形の葉っぱが、枝にたくさんついている。枝の先に行くほどだんだん小さくなる。葉のデザインは同じなのに、木琴を叩いたとき音階がひとつずつポンポンポンと上がっていくように、だんだん小さくなっていくのが可愛い。
今まで何度も見ているものをはじめて見たような気になって見とれてしまい、楽しくなってしまったのです。それで模様ができました。 


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初めて自分らしい絞りの模様が出来たと思いました。部屋に飾ったり温泉へ持って行ったりして近くにおいて使っています。
比較的細かい模様で、一番小さなところは小指の先ほどです。
布地は文(ぶん/織り目のざっくりした規格/総理)を使ったら、絞りの糸を巻いたところの模様が綺麗に染まらなかったので、細い糸を使ったなめらかな織りの岡(おか)という規格の布にしてみたら良くなりました。
普段使っていた市販の手ぬぐいを調べてみると、細かい模様は細かい織りの布に染めるようです。初歩的なことですが、布と染め模様の相性は重要なのだと知りました。
紙と画材の関係を想像するとちょっと分かりやすいかもしれません。例えばクレヨンで描くときはざらっとした画用紙が向いていますね。基本的な相性というものがあるのだと思います。

※手ぬぐいの細かい柄がかすれて消えてしまった例が『手ぬぐいを知る、作る、使う 手ぬぐいクリエイター』(てぬクリ実行委員会編)のp.57に紹介されていて参考になりました。

 

染料はみやこ染のスレンを使いました。
日本の伝統色をイメージしているのでしょうか、紅色のような赤です。
(スレン染料は絞り染めに向いている染料です。しかも日光や洗濯による色落ちの少ない染料なので手ぬぐいとして実用的。
みやこ染というメーカーのものは家庭用染料なので、キッチンでもじゅうぶんに染めることができます。)

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温泉で濡れたところ


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自然光のもとで撮りました

 

これは、柚木さんのおっしゃるような良い模様とは違うとは思います。
今お読みになっている人にもピンと来てもらえるかは、わかりません。 

でも、私の絞り染め模様の第一歩になりました。この模様は梢(kozue)という名前にしました。これからも色を変えたりして、絞り染めしていこうと思っています。
あの時じっと見た木の名前がいつかわかるといいなと思いながら。

絞りノートの記録にこんなことも書いてありました。
「11月某日 修行先でやってたときはもっと手早かった。もっと一生懸命進めていた。今、いろいろ考えてしまう。柄のこと、次に何をつくるかなど。絞りをやり始めたらよけいなこと考えるのはへらそう。ゼロにはならないけど。修行先の時は、ひたすらキレイに、手早くをこころがけている感じだった。早くあげて、できたものを見てもらいたい一心でやっていた」

以上、2018年の模様づくりを振り返ってみました。
次記事では2019年からの、絞り技法を増やしたことについて書く予定です。

こういう記事を書くことで、しぼり染めに興味を持ってくれる人とか、やってみよー、と思ってくれる人がいたらいいなと思っています。

長くて、拙い文章をお読み頂き、ありがとうございました。
ご感想やご質問、ご指摘などがありましたらコメントをお願い致します。


まとめ

・平縫い巻き上げ絞り=絞り染めの技法のひとつ。輪郭を縫ってから絞ることで、葉っぱなどの形も自由に表現できる

・細かい模様を絞り染めにするときは細かい織りの布が向く

・オリジナルの模様を作るつもりはなかったが絞りを続けるうちに作ることになっていった

・絞りの効果自体面白いので模様を自分で作るのが楽しい

・「模様を生み出すにはうれしくなるよりしょうがない」型染め作家柚木沙弥郎の言葉
※柚木沙弥郎(ゆのき さみろう) 1922年、東京・田端生まれ。初作品の型染めが日本民藝館の所蔵となる。国画会展に毎年参加、現在も精力的に制作を続けている。(柚木沙弥郎オフィシャルサイトより)

・「模様とは、ある法則があって、それに則って、かつ自由なもの」柳宗悦の教え
柳宗悦(やなぎ むねよし) 1889年~1961年 民藝運動を起こした思想家、美学者、宗教哲学者。東京・駒場日本民藝館の初代館長をつとめた。(Wikipediaより)

 

 

 

絞り染めをもっと知りたい

きょうはクリスマスイブです。いよいよ今年も終わりに近づきましたね。

今年の秋に立ち上げたブログは絞り染めについて書く場所が欲しいと思って作りましたが、なかなかすぐに書くべきことも見つからず…。年末に乗じて、今考えてることを皆様へ向けて書いてみようと思います。

 

絞り染めを自分でつくるようになって1年半が過ぎました。

自分で考えた図案も少しずつですが生まれてきました。

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日本の古典模様の「七宝繋ぎ」をアレンジして、絞りの青いバッグが2つできた時のものです。

 

絞りを習い、身に付けたところから数えれば2年と3ヶ月ほど。

今2歳半の小さな息子の成長のようすを見ては、じぶんの絞り染めは今この時期なのだと思うようにしています。

覚えることがいっぱいで、何にでも興味をもち、闇雲にやって失敗して、泣いて、汚れて、喜んで、怖がって、とにかく毎日キラキラしている。楽しい&楽しい、そんな時期です。

(本当のところはなかなか思う通りにいかないなー、進まないなー、といつも思っちゃうのですが)

 

私は個人的なご縁によって絞り染めを始めたのですが、絞り染めは古くからある技法です。日本では安土桃山~江戸時代にその技術力は盛り上がり、現在は伝統工芸として各地に伝えられています。

今年は一般に普及している絞り染めの本を色々と読みました。それから、地元のギャラリーで古い絞りの展示を見たり、日本民藝館で名作の絞りを見たりしていました。南部紫根染め(糸治)と片野元彦さん、のどちらも本当に素晴らしかった。目が洗われます。

制作のほうでは、市内の工房で正藍染という微生物の発酵の力で染める、日光に強く、洗濯で色落ちのしない、理想のような天然染料でじぶんの模様を染めさせてもらう、貴重な体験をしました。

大きな藍の甕に布を持った手を肘の上まで浸けてゆらゆらと動かして染めました。

液の面をゆらさないように、「藍に気付かれないように」染めると教わり、それはキッチンでいつも染めているものとはかなり違うものでした。運良く晴れていた夏の日で、染めた絞り布を3回、天日に干して色を定着させました。

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藍で染めて天日干ししたものです


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ほどいたときは感動しました。

 

 

今は絞り染めのことをもっと知りたいと思うようになりました。なぜ美しいのだろうか。

今年の始め頃、夜、布団の中でも絞り染めについてググり続けイギリスのジェーン・カレンダーさんという人の絞りの本の存在にたどり着きました。

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表紙の絞りの力に引っ張られて早速取り寄せてみたら、日本の絞りの技法を学んで制作したとのこと。

洋書で全文英語なので拾い読みですが、そのとき私の知っていた絞りのイメージが覆されました。複数の技法を、独自の組み合わせで作品にしておられます。

日本や中国、インドなどにみられる絞り染めやロウケツ染め、更紗や手描きなどの布の装飾技法をイギリスは長い間持たず、その代わり刺繍の文化がたいへん発達したのだと本で読みました。(手仕事にみるヨーロッパの暮らし ユキ・パリス著)

だからかどうかは謎ですが、とても新鮮な印象の絞り染めです。

 

それにしても普通にくらしていると、絞り染めについて人と語り合うことがなかなかありません。

布に模様を染めるやり方はもっと効率的なものがたくさんあり、今や絞り染めはマイナーです。

草木染めを愛好している人は体感ではけっこういらして、そういう人は絞り染めに興味を持ってくれることが多いこともわかってきましたが、それでも近所に都合良くそんな友達はいません。

 

ふと、日本の文学ジャンルに絞り染めが出てくることがわかりました。

枕草子の「とくゆかしきもの」や、

百人一首にも選ばれている、「ちはやふる~」で始まる在原業平(ありわらのなりひら)の和歌など。

これまで得た絞り染めの情報とはまただいぶ違う感じがして、面白いです。

普通に学校で習ったようなことですが、これまで気付かなかったのです。

 

ちはやぶる 神代もきかず竜田川 からくれないに水くくるとは

 

有名過ぎますが、あえて引用します。この歌は古今和歌集にも入っていて、相手への恋の気持ちを表した歌として知られています。

在原業平が主人公のモデルとも言われる伊勢物語にもこの歌が出てきます。

色男として有名な在原業平らしく、ある姉妹に惚れ、自分の着物の袖を切り恋文を書いたというような出だしの物語でした。

 

この和歌を細かく訳してみると絞り染めのことが出てきます。

水くくる、の「括る」が絞り染めを表しており、から→唐(韓)紅は紅葉の鮮やかな赤です。竜田川の水にたくさんの紅葉が浮かび流れて絞り染めのようだ、という意味に読めるのですが、この歌はそれを「川の水を絞り染めにした(とは、不思議なことの多い神々の時代にも聞いたことがない)」と詠んでいるところに驚きを感じます。

ここからは私の感想ですが、絞り染めは基本的に浸染(しんぜん・ひたしぞめ)で染めます。水にとけた染料を染液とする、水をたくさん使う染めかたです。

それから、染めあがった絞りの余分な染料をとるのですが、絞りの糸を解いてから水で洗うときに、とてもきれいに鮮やかに見えるのです。乾かして、布として使う時よりも美しいと思うくらいです。

その写真があればいいのですが、今はありません。そう、例えば河原でキレイな色の石だなぁ、と思って拾い上げて乾かすと水の中のほうがキレイだったと思うことはありませんか。それに似ています。

話しがそれましたが、染め物、とくに絞り染めは水と親しいということを在原業平は知っていたのかどうか、水を絞り染めにすると見立てて恋の歌にするところが思い切っていて良いなと思いました。

 

日本における最古の絞り染め正倉院に伝わる染織裂の遺品に見ることができる(世界の絞り染め大全 安藤宏子著)ということからみても、日本の絞り染め奈良時代から始まったという認識です。

昔の文学の作品で絞り染めはどのように題材とされているのか、という興味がわいてきました。

古語で絞り染めは、くくり、くくしもの、こうけち、くくしぞめ、ゆはた(ゆいはた)等の名称があると図書館で調べてわかりました。

古語辞典をひくと、それぞれの意味や、文学作品での文例がわかります。

そしてその周りに、くくし小袖とかくくし帯など、絞り染めに関係する言葉がボロボロ見つかります。はー(ため息です)

ほんとうに身近に絞り染めがあって、それを美しいと思って、文字にしていたのだなぁ…と時代の違いを感じます。うらやましい。

在原業平がどのような絞り染めを見て感動していたのかが気になるところです。

絞り染めを話題にしていた当時の人と仲良くなりたい。それは無理なので、せめて読めるものはこれからも読みましょう。

言葉は時代を越えて残ることがあらためてすごいと思います。それを書き写し印刷し続け今へ残してくれた人達のありがたさも感じました。日本語よ。

 

それから全然違うのですが、倉敷民藝館を設立し、民藝運動に関わった外村吉之助(とむらきちのすけ)の「少年民藝館」という本では、絞り染めについて「どこの家庭でも木綿の布をしぼって藍染の紺屋で染めてもらいましたが…」と書かれていて、そういう普通の家庭の絞りはどんな模様だったのか、なども気になります。

地方の民藝館巡りをすれば、絞りの仕事着などがありそうです。

それでなくても、東北の地域で生まれた浅舞絞り(秋田)などを見に行くことでヒントが得られる気もしています。

それらは来年以降少しずつ当たって行きたいと思います。

 

 

長くなってきたし、まとまりそうにありません。こうなるから書くのは難しいです。まだわかってないことが多すぎて恥ずかしくもありますが、そういうことは年末のバタバタに紛れて欲しいと思います。

 

江戸時代の俳句集「細少石(さざれいし)」に入っているというきれいな俳句を知りましたので、終わりに置くことにします。

風の手をくくし染めせよ花衣

 

 

それでは、良い新年をお迎えくださいね。

 

 

 

スレン染料の長所と短所を、1年間使用した結果で書く

2017~2018年に絞りの技術を習ったら次はそれを染めてみたくなって、独学で染色を始めました。

2018年6月から自分で染色をするようになり最初は草木染めに挑戦しました。

→ 初めての絞り染め(黒豆染め)①染料選び - しぼりぞめこの制作日記


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その2ヶ月後の8月あたりから、化学染料を使って絞り染めをしています。絞り染めに向いているとされるスレン染料を選んで使っていて、この1年間で17~18回スレンの絞り染めをしました。写真は2018年8月13日に染めたスレン染めの手ぬぐいです。

 

草木染めで染めた時は絞りの模様があまりはっきり出なかったり、思ったより薄い色になってしまったり…。染色の経験が足りないからなのか出来上がった布を見ても、自分の絞りの出来具合いがよくわからなかったのです。

草木染めは材料を鍋で煮出して染料を作り、染め、媒染して出来るので、なかなか時間のかかることです。

草木染めは本来は楽しいものなのだと思いますが、慣れていないと無駄や失敗も多くなり余裕がなかったです。そして絞り作業は途中で手を止められますが、染めているときは即座に中断出来ません。1歳になるかならないかの子供がいたので、昼寝したかと思ったら泣いて起きたりして、イライラしそうでした。

 

化学染料を使いたかった理由はもうひとつあります。私はその頃から、絞りのオリジナルの模様を形にして行きたいと思っていて「習った絞りを忘れないようになるべく毎日絞りをしながら新たな図案を考えて描きたい。染めた結果をどんどん見たい」と、思っていました。

新しいものを絞ったら染めてみることでしか結果が見えませんので、草木染めの勉強がゆっくりすぎて、染めを始めて2ヶ月くらいで、絞りと染めの研究のペースがズレてしまい絞りと染めの並走というか、そういう感じにできなくなってしまいました。

 

そう言えば絞りのやり方を教えてくれたFさんが、私が必死に作業するのを見て「おっとりしてるようだけどあなたはせっかちね、慌てないで、出来てるから。」と言ったことを思い出しました。(数回手を動かすのを見ただけで性格がばれるのか!とその時びっくりした)

染めを始めたその時も、せっかちになっていたかも知れません。やりたいことはさっさとやりたい性格のせいかも知れません。

 

そんなこともあって草木染めの色に拘ることなく、次は化学染料を使ってみることにしました。

ちょうど息子が1歳を過ぎ、昼間あまり寝なくなってきて、余計に少ない時間で染める必要がありました。まずは短い時間で染めることさえできたら、新たな図案の制作も進むはず、そう思って2018年の夏から2019年の夏まで化学染料で絞り染めをしました。

習った絞りを応用して、オリジナルの模様を作っては、絞りかたを考えてから染めます。はっきりした色に染まる化学染料によって、自分の絞りの出来も良くわかりました。布は染まりやすく好みにあっていたさらし木綿を使いました。値段が安いので気兼ねなく失敗できて良かったです。糸がほどけてしまい一部の絞りが派手にダメになったりしたこともあります。

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中央左あたりが失敗。染色中にほどけた絞りと、それが干渉して染まらなかった部分があります。

これは、初めて手ぬぐい大の布全体に絞り模様を施して染めてみた布です。スレン染料の藍色で染めました。模様は古典柄の七宝繋ぎです。

 

絞りは好きなのですが、染色するほうは2018年の時点ではまだ楽しいとは思えてなくて「出来れば絞りだけをやっていたい。代わりに染めてくれる人はいないか?」と思ってました。けれど頼める人はそうそういません。短時間で濃い色に染まる化学染料は本当にありがたかったです。

 

スレン染料(バット染料、建染染料とも呼ぶ)とは、化学染料のなかでも建て染めと言って、染める直前に建てる作業が必要です。私の使っている染料は5分程でできます。

私は詳しい説明がまだうまく出来ませんが、還元と酸化を利用した藍染の原理と同じだそうです。藍を染め液にする作業を藍建てと言います。もちろん藍染を建てるにはもっとずっと手間と時間がかかります。

化学染料といっても藍染の原理を利用していることがわかりました。自然のものからの学びによって作られていると知ることができたのは今後の私にとって何かしらのヒントになっていきそうです。

 

他にも化学染料は何種類かありますが、スレン染料はしっかりと染まりつくので絞り染めに向いているとのことで選びました。知り合いではありませんが、絞り染めを愛好している人はスレン染料を使う人も多いと聞きました。

スレン染料のよいところは、メーカー数社の説明によれば、日光にあたることや洗濯での色おちや変色が少なく、丈夫なところです。(染色の専門用語では「堅牢度が高い」と言う)スレン染料がもともと水に溶けない成分を使って染色するからです。これについてもまだうまく説明できませんが、染める作業のときに水に溶けない成分を還元して水に溶けるようにすることで布を浸して染色することができるようになり、次に酸化させることで布に染めついた色がもう水には溶けなくなるから色落ちがしにくくなる…ということ。

もっと分かりやすく説明できるように、もう少し理科の勉強させてください。化学の話はまた改めて書きますので、ここでは畳みます。

実際にスレン染料で手ぬぐいを染めて日帰り温泉などに出かけるときに持っていって繰り返し使ってますが、色落ちや色褪せは市販の手ぬぐいよりも全然ありません。

市販の手ぬぐいは元来色落ちを前提に濃く染められていると聞いたことがあるので、その場合の多少の色落ちが悪いわけでもないのですが。

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スレン染料で染めた手ぬぐい(約1年間使用)オリジナル模様「梢(kozue)」

スレン染料の赤で染色


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黒湯温泉秋田県乳頭温泉郷)で撮影

スレン染料は、一般的には既製服の他タオルの染色などにもよく使われる染料らしいです。色落ちが少ないから頻繁にハードに洗われるものに使われるのではないかと思っています。

デメリットは混色が難しいことです。染めてから空気に触れさせ酸化発色させるのですが、発色する前は全然違う色なので、何回も調整して混色の塩梅を探ったりしました。

 


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これが私の使っているメーカーのスレン染料です。家庭用の染料を昔から沢山売っている「みやこ染(桂屋ファイングッズ株式会社)」のもの。染料の色は全15色、鮮やかで日本的なカラーバリエーション。

この中で私の好きなスレン色は濃藍と赤です。※全色使ってみたわけではない。

ブルーとイエローを混ぜるとトルコブルー、ピーコックブルー、ピーコックグリーンが作れます。染料に対して水を多くして均染剤を加えれば淡い色も染めることができますが、染めムラが出来ないようによく液中で動かします。

このスレン染料は液体の状態で購入できます。他のメーカーに粉のタイプもあり、使ったことはありませんが初心者にはなんだか難しそうでした。

大事なことを忘れてました。スレン染料は木綿や麻は染まるけれど、絹には染まりません。現代の絹の着物は化学染料のことも多くて、酸性染料などで染められているようですね。

 

スレン染料を使うようになったおかげで、染める時間を相当に短縮出来て、なおかつ実用に耐える耐久性のある絞りが作れるようになりました。手ぬぐいがもともと好きで、良いと思える模様ができたらよく手ぬぐいにしています。実生活で使えるものが作れると、次へのモチベーションも上がります。

染めるのににかかる時間については、草木染めは慣れてないのもあって1日かかりましたが、スレン染料で染めると染料の準備から最後の干すところまで、だいたい2時間で済みました。火を使う必要もなく、廃液処理もそのまま流しに流すだけで安全性も高いというのが助かりました。(メーカー側で研究してくれています。)

※最初に染料に還元剤を入れて建てる作業をするときだけ熱湯を使うが、それも電気ポットで沸かした。

※火を使う必要がない、と書いたが染色し酸化発色した後に、ソーピングという5分ほど煮て余分な色を取る作業がある(11月25日加筆)

※この文章内で、作業として総合的に安全性が高いというだけで、スレンの染色に使う薬品や染料は危険。小さな子供の手の届かない所に保管し、誤飲などに対して注意が十分必要。

藍染の廃液処理のための薬品が染料店などで売られていることを考えると何故廃液をそのまま流しに流して良いのかが少々疑問でもあるので、追加して調べたい。

スレンの染色で思ったような絞り染めにしたい場合に、時々メーカーの説明書だけではやり方がわからないこともありましたが、染色の問い合わせの電話番号が書いてありそこに電話をかけると染色に詳しい人がいて、疑問に答えて頂くこともできました。

黒豆染めや玉ねぎ染めなどの草木染めをしている時は素材が台所の普通の食材だし、当然売っているスーパーや産直に聞くわけもいかないです。

スレン染料は染色のための商品で、求めればサポートのあることのありがたさを感じました。

化学染料を使ってみたことで節約した時間を模様の試行錯誤にあてることができました。半年後位からは少しずつ絞りの技法も増やし始めたりしながら、さらに楽しく絞れるようになっていきました。

 


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これはスレン染めの混色実験をしていたもので、2019年春~夏に染めました。ブルーとイエローの染料の混色です。もう少し絞り技法を増やしたかったので、その実験も兼ねています。

 


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素朴な鹿の子絞りを水玉模様のように配置して染めた、麻のハンカチです。これは鹿の子同士の間隔を小さくしようと考えているところ。

 


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左がスレン染めのハンカチ、右が玉ねぎ染めのハンカチです。

スレン染料の鮮やかではっきりした色合いを染めてみたことで、かえって草木染めや藍染のやさしい色合いの魅力がさらに見えてくる気がします。

 

草木染めや藍染などの天然染料の染めは、ゆっくり経験を重ねていきたいと思っています。化学染料も、天然染料の成分や染色の仕組みにヒントを得て、なるべく簡単に染色ができるように考えられてきたことも少しわかってきました。

しばらくは絞りの制作に草木染めと化学染料を両方使って、思うところが溜まってきたらまたそれぞれの雑感などをここに書きたいです。

 

スレン染料の染色はある程度慣れたので、やってみたいという方のご感想やご質問がありましたらコメントをどうぞ。

化学的なくだりの説明間違ってるよ…?と思った方もツッコミのコメントをください。

Twitterのほうにくださっても大丈夫です。

 

 

まとめ

  • 化学染料は短い時間で、濃く染めることができる(準備含め2時間)
  • スレン染料は木綿や麻の植物繊維の布に染まり、絹(動物性たんぱく質の繊維)には染まらない
  • スレン染料は建て染めの染料で、藍染の藍建ての原理を応用している
  • スレン染料は日光や洗濯で変色しにくく堅牢な染料である
  • みやこ染めのスレン染料は火を使わず、廃液もそのまま流しても安全。使い勝手の良さ
  • 混色は可能だけど難しい
  • 染色初心者は粉タイプのスレンより液体スレンが良さそう

 

 

 

 

 

 

 

 

初めての絞り染め(黒豆染め)④リベンジした結果

2018年6月、手探りで染色を始めたばかりでした。

草木染めの絞りにしたかったので、地元の岩手の黒豆で染めてみることにしたのですが、絞り模様の中にまで色が染み込んで失敗してしまいました。(絞りが泣く、というそうです)

 

7月2日

失敗のままでは落ち着かないので、すぐに2度目の黒豆染めをしました。

布も前回と同じく、さらし木綿です。絞りかたも同じにして「七宝繋ぎ」という古典模様に。技法は平縫い巻き上げ絞りです。

絞りは同じ模様の作業を繰り返したことで、より手慣れて来ました。

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平縫い巻き上げ絞りはこんな感じです。染めた後の糸をほどいているところ。

 

初回の染めで、呉汁につけてから染めると濃く染まることが解ってきたので今回もそれを取り入れました。

と言っても今回ぶんの布も前回の染色時にまとめて呉汁に浸けておいたので、その布を使いました。呉汁に浸ける作業はその都度やるのがいいのか、ある程度まとめて呉汁処理した布を保管しておいてもいいのかは解らないのですが、あまり長くない期間で使うのならまとめて処理しておいたほうが楽だと思いました。

大豆は煮豆で使いきれなかったものを使いました。食べる為ではないので多少古くなった豆でも良いのだと思います。

その時の大豆は2年ものだったので呉汁を取ったあとのカスを卯の花のように煮て食べましたが、水につけた生豆をミキサーで粉砕したものなので粒が大きくご飯のおかずにしたとき、知らない食べ物のようでした。

 

染色に話題をもどします。

今回は草木染めだけでなく、絞り染めの技法に関する本も読みました。

すると、絞りを染める時は「高温、短時間で染色する」という情報に行き当たりました。(「絞り染め大全」安藤宏子著より)

※「絞り染め大全」の補足しておくと、これは草木染めでの染色に関する表記ではなく直接染料(化学染料)で絞りを染色する場合についての解説だ。スレン染料、反応染料においても短時間で染色する指示文があった。

※上記を参考に、草木染めでも絞りの染色は高温・短時間が良いのではと自分なりに予想した。

 

どのくらい染め液につけたらいいのかということは絞り染め制作においては重要だと思います。高温かどうかは染料にもよるとして、絞りの場合、濃い色に染めたくても長時間染液に浸して染めるのはいけないようです。

前回は熱い染液に浸けたまま一晩近くおいてしまったので失敗の原因はそれでしょう。

その後1年くらい染色をしましたが、草木染め、化学染料染めに関わらず染め時間は1回につき15分~40分程度までがいいようです。そのくらいなら絞り模様がきれいに白く出ます。しっかりと絞ってさえいれば…

前回は薄いピンクに染まったので、もう少し青みがある紫に、濃く染めたいと思いました。

媒染は、前回と同じくミョウバン媒染です。

 

前回と変えたところ

  • 豆の量を2.5倍に増やし、染液を濃くとった
  • 黒豆を煮出す回数が増えると青っぽい色素が減り赤っぽい色素が良く出たので、煮出す回数を4回から3回に減らした(紫っぽい色にしたかった)
  • 一回の染める時間を減らし、長時間をさける。最長20分にした

 

染め上がりです。今回は絞り模様が白くでていて絞りがまずまず成功しています。
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七宝繋ぎは日本の古典的な吉祥文様です。円形が少しずつ重なって出来ている模様で、着物や、刺し子にもよく使われます。

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良いことが続いて繋がっていくように、という意味らしいです。縁起がよくてなおかつ絞りやすい形をしています。絞りを習ったときの最初の課題もこの模様でした。
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前回染めたものと並べて撮ってみました。
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右の2枚が前回で、左の1枚目が今回の布。前回より青みの色を出すことが出来ました。くすんだ薄紫色です。

薄い染め色と白場とのコントラストは弱いながらも、絞った模様はちゃんと出ていたので、習った技法でさらしを絞るのは問題なくやれそうだと思いました。

ただ、前回よりも豆をかなり増やし染液を濃く煮出したのに、染まった布の色は前回よりも少しは濃く染まったかな?というくらいでした。材料を増やして液を濃くするだけではダメ、ということです。

2回やってもあまり思い通りにいかなかったですが、また色々染めていくうちに解っていくこともあるかと今後に期待することにしました。

7月の東北地方とは言え、暑いさなかのでの作業になりましたが自分なりに草木染めの大変さと自然からの色の魅力を感じられたのは収穫でした。

特に、黒豆を数回煮出すうちの最初の方の色は青みが強く、後のほうになると赤みが強い色が出ることに気付けたのが面白かったです。

 

色をもらったあとのたくさんの黒豆は甘い味に煮て頑張って食べましたが、お正月に作る黒豆煮のようなコクやとろみがなく、なんだかとてももの足りぬ味でした。とことん煮出してしまったせいか…。

黒豆のこっくりした味に入っていた何かで色が染まったのだから、食べるときは色も食べているんだな、と普段考えないことを思いました。

 

初めての黒豆染めの全4回連続記事、とても長くなりましたが、すべて読んで頂いた方は大変お疲れ様でした。

初心者まるだしのレポートになりましたが、絞り染めをされる方、染色に興味のある方は、また別テーマの記事もどうぞよろしくお願いします。

 

 

まとめ

  • 防染できたので、前回よりはマシな絞り染めになった
  • 黒豆を煮出す回数で染まる色が変わる?回数を減らしたら青みが強くなった
  • 豆をたくさん増やしても染め色の濃さは少ししか濃くならなかったので他の方法を考えたい
  • 染めに使った食材を美味しく食べられたらもっといい

 

 

 

初めての絞り染め(黒豆染め)③濃く染まらない・絞りに染料が入り込む

また前回の続きです。染めた絞りをほどいてみたところです。

 

2018年6月22日

絞りを施したさらし木綿の布を、黒豆染めにしてみました。身近な材料で、絞りの出来がはっきり解るような濃い紫色に染めたかったのです。

結論から言うと、絞り染めは失敗でした。色は渋めのピンクに染まりましたが薄い色で、しかも白く残したかった部分にまで色が入ってしまいました。

色自体は草木染め特有のやさしい色味で悪くはなく、こんな色の帯揚げを染めたら使いやすそうだなとは思います。

しかしあまりにも模様が滲んでいます。とても残念でした。

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奥が呉汁なし、手前が呉汁につけてから染めたほうです。奥はほんのり色がついてるかな?くらいに白っぽく、ほんとに木綿は草木染めに染まりづらいことと、そして呉汁の濃染効果を感じました。奥の白っぽいほうは模様は全く出ず、絞りのシワのほうが目立つくらい。

濃染処理をした手前のほうも、染めてすぐは濡れていてもう少し濃く見えましたが、乾かしてみたら薄くなっちゃいました。

 

大まかですが、この時の作業手順です。

  1. さらし木綿の布に絞りを施す 
  2. 黒豆を水に浸けてから煮出して布で濾し染め液をつくる。合計4リットルくらい取れた
  3. 絞った布をしばらく水(湯)に浸ける
  4. 染め液を火にかけ、絞り布をなるべく液から出さずに中で泳がせながら染める
  5. 媒染。お湯に焼ミョウバンをとかした液に染めた布を浸けて時々動かし発色と色止めをする
  6. 水洗いする
  7. 再び染め液に入れて煮染め→媒染を4回繰り返し
  8. もう一度染液につけて、一晩くらいおく

 

絞りの布は小さなものだったので、染め液4リットルは多いかと思いましたが何度か煮染めして量が減ったので、結果的に多めで良かったです。染め液はかなり濃い色に見えましたが、だからといって濃く染まるものではないようです。

後で解るのですが絞り模様が出なかった原因は、8の工程がまずかった。

「絞りが泣く」という言葉があります。絞りとは布を糸などで圧力をかけて染料の入らない白い部分を作る(防染)ことで模様ができますが、せっかく防染した部分にも間違って染料が入り込んでしまい、模様のかたちが滲んだりしてしまうことを言うそうです。

 

なぜ一晩も浸けたか。

参考にした草木染めの本のなかに、よく染めたいときは染液が冷めるまで、できたら一晩くらいよく浸けておくほうがいいというアドバイスが出ていました。

しかし、それは無地の布やかせ糸を染める時のことだったようです。少しでも濃く染めて絞った模様をはっきり出そうと欲張ったのが裏目に出ました。

 

このとき絞り染めの本というのはまだ読んだことがなく、絞り染めの布の染め方を勉強しなければと思いました。

 

このあと黒豆染めのリベンジをしたので、次回はその事について書きます。

そうすれば黒豆染めのことはとりあえず完結なので、ちょっとしつこくなりますがご勘弁くださいね。

 

※参考にした本は

「キッチンでできる草木染め―身近な素材でわかりやすい染め方」 (レディブティックシリーズ)母袋信恵 著

この本には絞り染めのことはそんなに詳しく書かれていません。身近なもので草木染めをするやり方が色々書かれています。

 

まとめ

  • 布は薄い色にしか染まらなかったが色は日本っぽいやさしいピンクでなかなかだった
  • 染めたばかりで乾かしてないときは濃く見え、乾くと思ったより薄くなる
  • 絞りの中に色が入り込み模様がつぶれた。無地の布や糸染めなら一晩くらい染め液に浸けておくのもアリだけど絞りの場合長時間浸けるのはNG

 

 

 

 

初めての絞り染め(黒豆染め)②木綿を濃く染めるための呉汁のこと

前回の続きです。絞りは出来るけれど、染めは未経験状態だった時点を振り返って書いています。

 

2018年6月22日

絞り染めする布は、さらし木綿を使うことにしました。少し前に刺し子のふきんを縫うのにたくさん買った残りがあったし、ガーゼ地は染まりやすいそうですが、糸と糸の間隔が大きいのです。私の場合、図案の線にそって針と糸で縫ってから絞りを入れるため、ガーゼよりもさらしのほうがしっかりしていて糸を入れやすかったです。

それにもともと、さらし木綿の柔らかいのにさっぱりしている素直な質が好きで、しかも安くて失敗が怖くない、これは初心者には大きいです。

絞りを習ったときの布よりも柔らかかったですが、問題なく絞りを入れることができたので、向こう1年くらいはさらしを使って色々制作してみようと思い一反買い足すことになります。一反とは約12メートルで、千円以内で買えるものからあります。幅は34cm前後。

問題もあります。木綿の布は草木染めの色には染まりにくく、たいていは絹のほうが染まりやすいらしいのです。

でも絹は木綿より扱い慣れていないし、初心者が色々試すには高価なのでしばらくはさらしを使うことしました。

木綿が染まりにくい詳しい理由はもう少しまとめられるようになったら改めて書きます。

 

木綿を草木染する場合、呉汁という汁に布をつけることで、木綿にタンパク質が加わり濃く染まるようになるとのこと。

呉汁の詳しい作りかたは農文協の「草木で染める」という本に書いてあります。

ざっくり言うと大豆と水をミキサーで砕き、布で濾すと出来る汁で、この時は絞る前の布(切っただけのさらし)を呉汁に浸けてカラカラに乾かし、2~3日置いてから絞り作業をして、そのあと黒豆染めをしました。

呉汁の濃染効果を知りたかったので、呉汁に浸けたものと浸けてないものを用意し、染め比べてみました。


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どちらも黒豆を煎じた汁で染めたものです。写真の左が呉汁なし、右が呉汁に浸けてから染めた布。

明らかに右側のほうが濃く、呉汁の効果を感じました。布は絞っているので独特な姿をしています。

 

具体的な染めかたについては次回書きます。

 

まとめ

  • 染めものの初心者なのでさらし木綿を使っている。安くて扱いやすく、好みにあっていた。
  • 草木染の色は木綿に染まりにくい?→染める前に呉汁(ごじる)に浸けたらほんとに濃く染まった

 

 

 

 

 

初めての絞り染め(黒豆染め)①染料選び

2018年6月

初めての染色に挑戦しました。

その1年ほど前から絞りのやりかたを習っていたので、絞った布を自分でも染めてみたいと考えたのです。

手芸屋などで染め粉を買って来れば染め物はできるだろうと思ったけれど、絞りを習った着物屋さんは植物の色を使った草木染めで染めていました。

なので私も自然の植物で染めてみたいと思い、染める素材に黒豆を選びました。

黒豆を選んだのは、草木染で紫色を、しかも身近な材料で出せないか?と考えたから。黒豆を水につけると赤っぽい紫のような汁になるイメージがあり、紫なら濃く染まれば絞り模様がはっきり出やすいのではとも考えたような気がします。

ただ、染め物自体全くしたことがないから何をどうやっていいのか皆目わからず、とりあえずネットで調べてみると黒豆で染色はできるらしくて、それならばやってみることにしました。

ネットだけでは情報が少なく不安だったので草木染めの基本方法がわかる本を図書館で何冊か借りて来て急いで読みました。

 

そうすると、

  1. 染料(植物)は水で煮出して染液を作る
  2. 染液と布を鍋で煮ながら染める
  3. 媒染をする。染料で染めたあと違う液体に浸けて色を鮮やかに、なおかつ布に色定着させやすくする

という草木染共通の手順が見えてきました。

(材料にする植物によって細かいやり方は変わったりするようです)

そして産直に行き、染色の材料とするために、隣町あたりで作られた黒豆を買って来ました。


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黒豆を煮出して作った染液。左の手前のは先、奥が後。数回煮出したので色が違います。

 

※この時の染色で参考にした本

図書館の棚で選んだ初心者でもとっつきやすかった以下2冊の本です。

「草木で染める」林泣童 著(農文協

初心者にも分かりやすい書き方で、なかなか本格的な草木染めのやり方が解る本です。

 

「キッチンでできる草木染め―身近な素材でわかりやすい染め方」 (レディブティックシリーズ)母袋信恵 著

キッチンにある野菜など身近な材料で草木染ができる本です。初心者にもやり易いものが多く載ってました。昔の本なのでちょっと古い感じですが、細かい手順が親切。

 

まとめ

  • 草木染に興味があった
  • 茶、ベージュ系ではなく紫色が出したかったので黒豆染めをしようと思った
  • 草木染は染料を煮出した染め液と媒染剤による発色および色止めが必要
  • 普通の図書館で草木染の本は数冊見つかる