「ストライプ/ボーダーは現代の私たちの衣服や暮らしで馴染み深い模様。それを絞り染めで作ったら楽しいかも」という単純な考えから、縞模様をデザインするようになった。縫い絞りの図案には幾何学模様と動植物の自然を取り入れた模様の両方あり、小紋や絵羽模様が多い。一方、縞模様の絞り染めは古い着物の資料にもあまり見られない。その理由はよくわからない(曲線の立涌模様を縞模様と捉えればあるし、縫わずに糸を巻きつける「筋絞り」という技法は縞っぽい)。
着物の縞柄は、織物のほうがはるかに多い。織り機の経(たて)糸の色を変えて設定すれば(←整経と言う工程)、あとは無地の布を織るような要領で様々な縞模様ができあがるので生産されやすかったのかもしれない。古い時代の農家には織り機があり「縞帳」という布地の端切れを古い帳面に貼り付けて、布地のサンプル集として大切に保管していたと聞く。
今年の4月に永眠された、美術評論家の海野弘さんは縞模様について魅力的に書いている。その熱い波のような語り口のおかげで飽きずに美術史にふれることができる文章家でもある。海野氏は、平行線によってできる縞模様は畑の畝を切る「耕作」に似ていると言う。耕作は英語でカルティヴェート、つまり文化(culture)の始まりであり、文様のはじまりであると書いている。それを読んで私も縞模様を作ってみたいと思った。
布をまっすぐに縫った糸を引き締めてから液に浸けて染めると直線の絞り模様ができるが、プリント布の縞模様とはだいぶ違い不規則な暈(ぼか)しができて面白い。平面のまま縫えば細い縞が、折りたたんで縫えば太い縞ができる。縫い線の間隔を近くすれば布地がアコーディオンのように折りたたまれ、縫った線を九十度回転させた方向の細かな木目のような模様もできる。縫っては糸をひいて絞り、また余った糸で続けて縫っていけば一本の糸で長い反物の端から端まで絞ることができる。
去年の冬頃から実際に作っている絞りの縞模様を4種類、以下に並べてみる。
この他にも、沢山葉っぱの繁った枝のような縞模様や、鹿の子絞りの点々を沢山繋げた縞模様などを作っている。面白くなってきたので、世界の模様を参考にしつつ更に色んな縞のバリエーションを探っていく予定。
1、畑の畝(ウネ)に種をまいていくようなイメージの縞(黒)
2.折縫い絞りを2種、交互に配置した縞(ピンク)
3.単純なシングルの平縫い引き締め絞りを斜め配置にした手綱模様(薄紫・薄青)
4.滝を意匠化した日本の滝縞という伝統的模様を絞り染めで再現(紺)