令和3年7月4日(日)

いちばん長くて3か月近くかかる絞りをしたことがある。絞りをすること、それは姿の見えないことだ。白い布は糸であちこち圧力をかけられ絞りあげられ、長い時間をかけてツノまみれのような塊が出来上がる。完成の姿とは全く違う見た目のをいったん作り上げる絞り染めは、焼くと印象がガラリと変わる陶芸に少し似ているかもしれない。どんなものが完成するか、染めたあとに糸を解くまでちゃんとはわからない。私は最初の出産をして3ヶ月の頃に絞りの手解きを受けた。お腹でいのちを育むことは絞りに一番近いと思っている。自分の作っているものが見えないからだ。ただ祈りながら完成を目指す。月日をかけて絞りあがった布を染めて糸を解いてやっと、その模様に出会う。突然現れる色とかたちは、自分にとっては成功も失敗もないように思えていとしい。絞りを染めて糸を解くことは時が満ち出産する時のようだ、などとやくたいもないことを考えたりする。