令和3年6月13日(日)

2年前、片野元彦(1899-1975)の絞り染め展を観た。その時は片野氏の存在すら知らず「絞り染めの大きな展示というのはそう無いからきっと重要。是非行っておこう」と新幹線に乗って向かった。元々は絵画の人で岸田劉生に師事、生活の為に染色の仕事をしていたが、57才で柳宗悦の命を受け絞り染めの本格的制作に入った。愛知県の有松・鳴海絞りを視察した柳宗悦には、藍染絞りを再興したいという思惑があった。片野氏は藍建てを何度も何度も失敗し、苦労して次第に自分のものにしていったという。有松・鳴海絞りをベースにした迫力のある藍染め絞りで、長女かほりさんと共に縫い絞りの技法「片野絞り」を確立した。一枚の広巾の絞り布が初夏の空気感の中、強烈な輝きを放っており「白影絞り」の高度な技法であった。他の技法とは逆に白い色の面積がとても多い涼し気な絞りだが、片野氏のそれは夏の光をうけたガラスか、打ち水のまぶしい地面のようだった。圧倒的だ。技法を表現まで高めるということの一例を現実に見た思いがした。