令和5年12月11日(月)縫い絞りの作業プロセス構築

今年は縞模様を起点にしていくつかの新しい絞り模様を考えてきた。縫い絞りの模様は基本的に「模様を全部縫って糸を引いて絞る」ことでできていくのだけれど、縫うべき順番や向きをまちがえると、とてもうまくいかない。それを正しくやるだけでもかなり早く、きれいに出来上がる。

例をあげてみる。輪郭線を縫うときは時計回りに針を入れたほうが絞る糸を引っぱりやすいし、玉止め(縫い始め、縫い終わり)は図案の中央側に配置したほうが図案のアウトラインがスッキリと締まる。それから、平らな生地を縫う前にすぐ隣の部分を絞ってしまうと縫いづらくなるので、ある程度縫いためてから少し遅れて絞っていったほうがいい、なんていうこともある。

縫い絞りの面白いところは、2D(平面)の布をいったん3D(立体)に絞り上げてから染め、染まったらまた糸を解いて2D(平面)に戻すところである。模様をつけるために一度彫刻をつくるような、なかなかの遠回りである。そのせいか、絞りの美的なことよりも、主に物理的制約のほうを考えながら絞ることになる。

布に針を何十本もたくさんつけたまま絞らねばならない模様だったので、誤って針で手を刺して流血することが多くて困っていたのだけど、長い布で繰り返し同じ模様をやっていたら自然と手捌きがよくなって怪我をしなくなっていった。たくさんぶら下がる針の置き場がなくてどうしておけばいいのか方法が決まらずに、紙切れにマスキングテープでたくさんの針を貼り付けたりして縫い続けていたらそれはすごく面倒くさかったが、倍の数の針山を買い足したらやっとスムーズにできた。

まとめると、これまでやったことのない新しい模様を絞る場合は

  1. 使用する道具を足したり引いたりして調整
  2. 縫い・絞りの作業の手順決めをする
  3. 手の慣れにより、次第に無意識のもたつきが解決

1〜3をしばらく試行錯誤しながら固めてゆく。流血したりして小さく叫びながらも、だいたいのことが固まってくれば落ちついて長い生地が絞れる。タイトルの「縫い絞りの作業プロセス構築」とはだいたい以上のことを指す。粗削りながらもそれができると、トンネルが開通して向こうに光が見えたような気分が得られる。それではまた次回。