令和5年3月20日(月)布を知りたくて、糸を解した話【後半】

前回の続きです。染色を4年続けてみて、染める布(繊維の種類、織り方など)によって染まり具合や何やかやが、色々違うなあと感じて。それで、身近なところで出来る範囲で布の勉強をはじめようと思った…という話を書きました。

あとは本当にタイトル通りなんですが、普段私がしぼりに使っている白い布を構成する緯(よこ)糸を引っ張って、布からはずしてみたんですね。まず、絹織物の糸を1本はずして適当にいじっていたら、わりと簡単にパラッと撚りが解けまして、蜘蛛の糸のように細いけれど、ものすごく長い繊維が見えてきたんです。絹は蚕の、つまり蛾の繭からとっているということは皆さんもご存知かと思いますが、光に透かすとちょっとキラキラっとして、なんとなくねっとりしているんですよね。タンパク質だからなのか、木綿の糸とはだいぶ違う感じです。ちなみに木綿は(麻も、ですが)セルロースというものでできていて、こっちは炭水化物に分類されます。で、絹の繊維は、牛乳を温めたときにできる膜をすごく細くしたんじゃないか……という質感で、どことなくヌメッとしています。絹って光沢感があるイメージですが、その原因には織り方もあると思いますが、私の使っている新潟の絹織物には、繊維自体に既に光沢がありました。そして、とても長い。絹は長繊維といって数百メートルとか千メートル以上もあるそうです。蚕の幼虫はそんなに長い糸をひと息に吐けるものなのか、そのあたりはちょっとよくわかりませんが、短繊維である綿や麻とはかなり違います。天然繊維で、かつ長繊維(※超長繊維か?)なのは絹だけです。

木綿は糸を糊のようなもので固めて紡いで糸にしてから織るそうです。布から糸をはずして解すとふわふわしたワタ状態になりました。木綿が普及したのが江戸時代以降なのですが、服や布団が綿で作られるようになると、家の中にホコリがよく出るようになったらしいです。繊維自体が短いからなんですね。繊維が短くて毛羽が立ちやすいため、肌触りはフワッとした感じになります。絹と麻がほとんどだったのが木綿の着物に変わった時は、肌に優しいと人々は思った……というような内容が柳田国男の『木綿以前の事』に書かれています。麻のことも書かれていますが、麻は短繊維ですが木綿よりは繊維が長く(だいたい3センチくらい?)肌あたりはガサッとしていたらしいです。最近の麻は、服地なんか特に加工技術の向上なのか、あまりガサッとしてはいないですが。

というわけで布の緯糸を解して手で触ったりじっと観察してみたりすると、本で得た知識も結構興味深いものになってきました。布に色を染めることは既に出来ますが、繊維に色が染まる仕組みについて、もう少しちゃんと理解しようと思いました。