令和4年6月6日(月)スリップウェア、村上隆、しぼり染め

古くて、良いスリップウェア(イギリス発祥の焼き物)を最近見つめた。それはエッグベイカーだった。泥漿状の化粧土がチョコレートとホワイトチョコレートのようで、焼かれていてなお液体として流れてるような感じがしてとてもいい。絞り染めにも似たところがあって、ぼやけている部分のあの感じが好きだ。水と染液がぶつかった地点によい滲みができるところ、染め上がって乾いても水のような雰囲気が残るところはスリップウェアのとろりとした模様と通じるかも、と思っている。昔(めちゃめちゃ昔、鎌倉時代とか)は絞りが主な模様染めの技法だったので、滲まない・ぼやけないための技量が求められたと思う。現代は細かい模様の染め物をつくれる技術がもっと他にあるから、絞りゆえ醸し出せる感じに目が行く。現代美術家村上隆が所有するスリップウェアのコレクションがあり(スーパーフラットコレクション)、コレクションへの本人の語りの解説動画を見てみた。スリップウェアの「きたないところ」「まずしいところ」がいいと発言していて思わず吹き出してしまった。さすがにその言い方はないでしょ、とは思いつつも工芸品の手仕事ならではの側面に添えられがちな「手のぬくもり」「味わい」などの言葉に私は時につまらなさを感じている。自分が美しいな、いいなと思うものの魅力とはいったい何なのとドキドキした。