布について思いをめぐらせる。布というのは不思議な存在感で、雨に濡れた道路に落として踏まれて一旦気付かれないほどになったとしても、その気になって洗って乾かせばよみがえってまた使える。布は水を通し、風を通す。ガラス板はそれらを通さない。
布はあらゆるものを包むものだということにハッとさせられる。金属や木の箱は、中に入れるものの形が合わなければだめだけど、布は中身に合わせる。薄いものは薄く、厚いものは高さを出して包む。かりに包めない大きさだとしても、上にかけてやればパンのほこりをよけ、おにぎりの湿気を調整する。
布はその主人のかたちや素材を否定しない。布はその主人の自由な在り方を受け入れ、自分のかたちを変え、自分を汚して主人を守る。布は割れない。もしも破れれば縫うといい。
いま、布からこんなことを感じているのは小さな子供とどう付き合うかを考えているからで、自分がなりたいと思っている姿を布に重ねて見ているのだと思う。