令和4年10月13日(木)デジタル、アナログ、染めもの

このブログでは、化学染料と草木染めのそれぞれの色の違いにかんするお話をよくしています。今の社会では、草木染めの色は貴重な良いもので、やや敷居の高いものというイメージを持って扱われているように思います。一方、化学染料はコスト的に安いが、ありふれたものであり、人体に有害なこともある。そんなイメージを私たちは持たされてはいないでしょうか。

私は絞りを染めるのに化学染料も草木染め(天然染料)もどちらも使っていますが、引き続き、しばらくその両方を使おうと思います。何故なら私の生活に両方必要だということを感じるからです。

化学染料の色はデジタルであり、天然染料の色はアナログであると仮に考えてみました。音楽、映像、雑誌や書籍。デジタル情報の活用をしている人は少なくないと思います。「やっぱり生の演奏の音はいいなあ」とか「紙の本はいいなあ」とか、もちろん私だって思います。しかし、必要とするタイミングで自分たちを潤してくれるものとして、だんだんと人はデジタルを採用してきたのだと思います。

化学染料と草木染め両方に触れたときに私が何となく感じるのは以下のようなことです。

化学染料の色は直接、頭の、主に理屈で考えているところに働きかけ、それから、記憶としての五感に働きかける。そうすると経験を思い出すことで五感が活性化される。天然染料の色は直接五感に働きかけ、五感が震えたあと、それを咀嚼し頭で記憶する。私はデジタルとアナログの違いについても、そのように感じています。

“草木染めの色は、野原に放つと一体化する”そんなようなことを、ある染め物の大家が言ったらしいです。では、もしそうだとすれば、草木染めの布を私たちの生活に放ったら、それは、卓に花を一輪飾ることと同義なのではないかと思うのです。今、私にとって草木染めはそういうものです。