令和4年10月18日(火)藍・桃・橙・紫は「ある」 赤・青・黄・黒は「ない」

色について気になってしまうようになった。この間、染め物と関係がないと思って見ていた言語学のYouTuberが「数と色は共通している」と言ったのを聞いて、耳が過剰に反応した。2年くらい前に読んだ『ヨーロッパの装飾と文様』(海野弘 著)の始まりの「装飾 私たちはそこで美しい世界を見る」という文章のなかで「パターン(模様)は言語のようなものであり、言語よりも普遍性がある」ということを読んで深く感心したことがあった。その認識がずっと頭に残っており、今回の「数と色」を結びつけた話と「言葉と模様(文様)」の深い関連を考えながら絞り模様を作ってきたことと、その2つが突然結合して、妙な気持ち良さがあった。

YouTuberのその主張を簡単に説明する。数も色も「人間が勝手に決めたもの」で、「光のスペクトルのここからここまでを赤とする」というもの。「色の名前は自然界に存在しない。つまり、赤という物は存在しない。数も1、2、3という見える物があるわけではなく、人間が決めたものである」ということだ。補足として「橙、など自然にあるものを色にしているのもある」ということだった。確かに色の名前には自然物と、そうでないものがあるが赤、青、黄という基本の色はどれも自然物の名前ではなく、色そのものをあらわす名前だ。日本の伝統的な色は自然物や生活まわりの物が名前になっているものが多いから、色に対する考え方は国によるかな、と思わなくもないけど、平安時代に「今様色」なんていう「今流行りの」という意味の色の名前もあるので、やっぱり全てがそういうわけでもない。

絞り染めで模様を作るとき、色がなければ模様はつくれないので、色と模様は不可分だなあと思っていたけれど「色は数」「模様は言葉」というセットで考えてみると、さらに布を見たり、制作したりするのが面白くなりそうだと感じた。