2017~2018年に絞りの技術を習ったら次はそれを染めてみたくなって、独学で染色を始めました。
2018年6月から自分で染色をするようになり最初は草木染めに挑戦しました。
→ 初めての絞り染め(黒豆染め)①染料選び - しぼりぞめこの制作日記
その2ヶ月後の8月あたりから、化学染料を使って絞り染めをしています。絞り染めに向いているとされるスレン染料を選んで使っていて、この1年間で17~18回スレンの絞り染めをしました。写真は2018年8月13日に染めたスレン染めの手ぬぐいです。
草木染めで染めた時は絞りの模様があまりはっきり出なかったり、思ったより薄い色になってしまったり…。染色の経験が足りないからなのか出来上がった布を見ても、自分の絞りの出来具合いがよくわからなかったのです。
草木染めは材料を鍋で煮出して染料を作り、染め、媒染して出来るので、なかなか時間のかかることです。
草木染めは本来は楽しいものなのだと思いますが、慣れていないと無駄や失敗も多くなり余裕がなかったです。そして絞り作業は途中で手を止められますが、染めているときは即座に中断出来ません。1歳になるかならないかの子供がいたので、昼寝したかと思ったら泣いて起きたりして、イライラしそうでした。
化学染料を使いたかった理由はもうひとつあります。私はその頃から、絞りのオリジナルの模様を形にして行きたいと思っていて「習った絞りを忘れないようになるべく毎日絞りをしながら新たな図案を考えて描きたい。染めた結果をどんどん見たい」と、思っていました。
新しいものを絞ったら染めてみることでしか結果が見えませんので、草木染めの勉強がゆっくりすぎて、染めを始めて2ヶ月くらいで、絞りと染めの研究のペースがズレてしまい絞りと染めの並走というか、そういう感じにできなくなってしまいました。
そう言えば絞りのやり方を教えてくれたFさんが、私が必死に作業するのを見て「おっとりしてるようだけどあなたはせっかちね、慌てないで、出来てるから。」と言ったことを思い出しました。(数回手を動かすのを見ただけで性格がばれるのか!とその時びっくりした)
染めを始めたその時も、せっかちになっていたかも知れません。やりたいことはさっさとやりたい性格のせいかも知れません。
そんなこともあって草木染めの色に拘ることなく、次は化学染料を使ってみることにしました。
ちょうど息子が1歳を過ぎ、昼間あまり寝なくなってきて、余計に少ない時間で染める必要がありました。まずは短い時間で染めることさえできたら、新たな図案の制作も進むはず、そう思って2018年の夏から2019年の夏まで化学染料で絞り染めをしました。
習った絞りを応用して、オリジナルの模様を作っては、絞りかたを考えてから染めます。はっきりした色に染まる化学染料によって、自分の絞りの出来も良くわかりました。布は染まりやすく好みにあっていたさらし木綿を使いました。値段が安いので気兼ねなく失敗できて良かったです。糸がほどけてしまい一部の絞りが派手にダメになったりしたこともあります。
中央左あたりが失敗。染色中にほどけた絞りと、それが干渉して染まらなかった部分があります。
これは、初めて手ぬぐい大の布全体に絞り模様を施して染めてみた布です。スレン染料の藍色で染めました。模様は古典柄の七宝繋ぎです。
絞りは好きなのですが、染色するほうは2018年の時点ではまだ楽しいとは思えてなくて「出来れば絞りだけをやっていたい。代わりに染めてくれる人はいないか?」と思ってました。けれど頼める人はそうそういません。短時間で濃い色に染まる化学染料は本当にありがたかったです。
スレン染料(バット染料、建染染料とも呼ぶ)とは、化学染料のなかでも建て染めと言って、染める直前に建てる作業が必要です。私の使っている染料は5分程でできます。
私は詳しい説明がまだうまく出来ませんが、還元と酸化を利用した藍染の原理と同じだそうです。藍を染め液にする作業を藍建てと言います。もちろん藍染を建てるにはもっとずっと手間と時間がかかります。
化学染料といっても藍染の原理を利用していることがわかりました。自然のものからの学びによって作られていると知ることができたのは今後の私にとって何かしらのヒントになっていきそうです。
他にも化学染料は何種類かありますが、スレン染料はしっかりと染まりつくので絞り染めに向いているとのことで選びました。知り合いではありませんが、絞り染めを愛好している人はスレン染料を使う人も多いと聞きました。
スレン染料のよいところは、メーカー数社の説明によれば、日光にあたることや洗濯での色おちや変色が少なく、丈夫なところです。(染色の専門用語では「堅牢度が高い」と言う)スレン染料がもともと水に溶けない成分を使って染色するからです。これについてもまだうまく説明できませんが、染める作業のときに水に溶けない成分を還元して水に溶けるようにすることで布を浸して染色することができるようになり、次に酸化させることで布に染めついた色がもう水には溶けなくなるから色落ちがしにくくなる…ということ。
もっと分かりやすく説明できるように、もう少し理科の勉強させてください。化学の話はまた改めて書きますので、ここでは畳みます。
実際にスレン染料で手ぬぐいを染めて日帰り温泉などに出かけるときに持っていって繰り返し使ってますが、色落ちや色褪せは市販の手ぬぐいよりも全然ありません。
市販の手ぬぐいは元来色落ちを前提に濃く染められていると聞いたことがあるので、その場合の多少の色落ちが悪いわけでもないのですが。
スレン染料で染めた手ぬぐい(約1年間使用)オリジナル模様「梢(kozue)」
スレン染料の赤で染色
スレン染料は、一般的には既製服の他タオルの染色などにもよく使われる染料らしいです。色落ちが少ないから頻繁にハードに洗われるものに使われるのではないかと思っています。
デメリットは混色が難しいことです。染めてから空気に触れさせ酸化発色させるのですが、発色する前は全然違う色なので、何回も調整して混色の塩梅を探ったりしました。
これが私の使っているメーカーのスレン染料です。家庭用の染料を昔から沢山売っている「みやこ染(桂屋ファイングッズ株式会社)」のもの。染料の色は全15色、鮮やかで日本的なカラーバリエーション。
この中で私の好きなスレン色は濃藍と赤です。※全色使ってみたわけではない。
ブルーとイエローを混ぜるとトルコブルー、ピーコックブルー、ピーコックグリーンが作れます。染料に対して水を多くして均染剤を加えれば淡い色も染めることができますが、染めムラが出来ないようによく液中で動かします。
このスレン染料は液体の状態で購入できます。他のメーカーに粉のタイプもあり、使ったことはありませんが初心者にはなんだか難しそうでした。
大事なことを忘れてました。スレン染料は木綿や麻は染まるけれど、絹には染まりません。現代の絹の着物は化学染料のことも多くて、酸性染料などで染められているようですね。
スレン染料を使うようになったおかげで、染める時間を相当に短縮出来て、なおかつ実用に耐える耐久性のある絞りが作れるようになりました。手ぬぐいがもともと好きで、良いと思える模様ができたらよく手ぬぐいにしています。実生活で使えるものが作れると、次へのモチベーションも上がります。
染めるのににかかる時間については、草木染めは慣れてないのもあって1日かかりましたが、スレン染料で染めると染料の準備から最後の干すところまで、だいたい2時間で済みました。火を使う必要もなく、廃液処理もそのまま流しに流すだけで安全性も高いというのが助かりました。(メーカー側で研究してくれています。)
※最初に染料に還元剤を入れて建てる作業をするときだけ熱湯を使うが、それも電気ポットで沸かした。
※火を使う必要がない、と書いたが染色し酸化発色した後に、ソーピングという5分ほど煮て余分な色を取る作業がある(11月25日加筆)
※この文章内で、作業として総合的に安全性が高いというだけで、スレンの染色に使う薬品や染料は危険。小さな子供の手の届かない所に保管し、誤飲などに対して注意が十分必要。
※藍染の廃液処理のための薬品が染料店などで売られていることを考えると何故廃液をそのまま流しに流して良いのかが少々疑問でもあるので、追加して調べたい。
スレンの染色で思ったような絞り染めにしたい場合に、時々メーカーの説明書だけではやり方がわからないこともありましたが、染色の問い合わせの電話番号が書いてありそこに電話をかけると染色に詳しい人がいて、疑問に答えて頂くこともできました。
黒豆染めや玉ねぎ染めなどの草木染めをしている時は素材が台所の普通の食材だし、当然売っているスーパーや産直に聞くわけもいかないです。
スレン染料は染色のための商品で、求めればサポートのあることのありがたさを感じました。
化学染料を使ってみたことで節約した時間を模様の試行錯誤にあてることができました。半年後位からは少しずつ絞りの技法も増やし始めたりしながら、さらに楽しく絞れるようになっていきました。
これはスレン染めの混色実験をしていたもので、2019年春~夏に染めました。ブルーとイエローの染料の混色です。もう少し絞り技法を増やしたかったので、その実験も兼ねています。
素朴な鹿の子絞りを水玉模様のように配置して染めた、麻のハンカチです。これは鹿の子同士の間隔を小さくしようと考えているところ。
左がスレン染めのハンカチ、右が玉ねぎ染めのハンカチです。
スレン染料の鮮やかではっきりした色合いを染めてみたことで、かえって草木染めや藍染のやさしい色合いの魅力がさらに見えてくる気がします。
草木染めや藍染などの天然染料の染めは、ゆっくり経験を重ねていきたいと思っています。化学染料も、天然染料の成分や染色の仕組みにヒントを得て、なるべく簡単に染色ができるように考えられてきたことも少しわかってきました。
しばらくは絞りの制作に草木染めと化学染料を両方使って、思うところが溜まってきたらまたそれぞれの雑感などをここに書きたいです。
スレン染料の染色はある程度慣れたので、やってみたいという方のご感想やご質問がありましたらコメントをどうぞ。
化学的なくだりの説明間違ってるよ…?と思った方もツッコミのコメントをください。
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まとめ
- 化学染料は短い時間で、濃く染めることができる(準備含め2時間)
- スレン染料は木綿や麻の植物繊維の布に染まり、絹(動物性たんぱく質の繊維)には染まらない
- スレン染料は建て染めの染料で、藍染の藍建ての原理を応用している
- スレン染料は日光や洗濯で変色しにくく堅牢な染料である
- みやこ染めのスレン染料は火を使わず、廃液もそのまま流しても安全。使い勝手の良さ
- 混色は可能だけど難しい
- 染色初心者は粉タイプのスレンより液体スレンが良さそう