令和5年10月19日(木)絞り染めの言い換えことば

誰でも「絞り染め」という言葉を聞けば詳しいことは知らなくても大体何のことかがわかるだろうと思っているから、そのように呼んでいる。しかし私は絞りの「絞」の字を好まないので意味が通じると思われる場合だけ「しぼり染」と表記したりする。

大正から昭和期に活躍したグラフィックデザイナーの杉浦非水は「志ぼりの図案」という本を出版した。絞り染めの技法の可能性を評価した非水の絞り染めのための図案集で、当時は「志」という雰囲気のよい漢字をあてることもあったことが伺える。

5年前、絞り染めのことを知ろうとして「日本の文学作品に書かれている絞り染め」を図書館司書の方に頼んでピックアップしてもらった際に「絞り染め」以外の呼び方が多くて面白かったので、それを紹介する。

括り(くくり)・括物(くくりもの)・括染め(くくしぞめ)・纈(ゆはた/ゆひはた)・纐纈(かうけち/かうけつ)

以上が奈良時代万葉集平安時代枕草子や、江戸時代の句集などから集められたレファレンス回答に入っていた。全て絞り染めの言い換え言葉だ。

括り、という言い方は有松絞りなど大きな産地の人がよく使うのを聞く。纐纈(現代の口語読みでは‘こうけつ’か‘こうけち’)は絞り染めの説明で良く使われる『三纈(さんけち)』の纐纈なので知っていた。纐纈は人の名字として今も残っている。音読みで、漢語らしい硬さのある言葉だ。

個人的な好みで、纐纈の纈の1字を取った「ゆはた」という呼び名を気に入ってしまったので使いたいけれど、誰にも伝わらなさそうなので5年間たっても使うチャンスが全くなかった。残念である。

もっともっと絞り染めを意味する他の呼び名はないのか?と思って探ってみたので、それらの呼び名を羅列して今回は終わりにする。広辞苑・染織辞典・地方絞りの文献などから拾ってきたもの。さらに集めてみたいので、ご存知であれば教えてほしい。それではまた。

目染(めぞめ)・目交(めゆい)・纈巾(ゆはた)・結幡(読み不明)・取染(とりぞめ?)・大纈(おおけち)・一目纈(ひとめけち)・二目纈(ふためけち)・作目(さくめ)・重目結(じゅうめゆい)・三滋目結(さんじめゆい)・三目結(さんめゆい)