令和5年10月13日(金)絞り染めをデザインする、とは?

どこかにやわらかさや優しさのあるものを作りたいと私は思っているらしい。自分のことなのに「らしい」と書いたのは、もともとそんな発想を自覚した経験がなかったからだ。じゃあ最近は何故そのように思っているのかということを考えながら今回は書いてみたい。

手ぬぐいやハンカチなどの日常的な用途の布を想像してみてほしい。それらは私たちの汗を拭くし涙も拭く。稀にだけど血が流れたりすれば、それもおさえる。私たちの生きている証拠みたいに、身体が出してくるものをダイレクトに受け止めて染み込ませ、身体は良い方へ向かう。布が汚れたら水で洗い、綺麗にリセットしてふたたび使用可能になる。そういうことができる布の素材自体、染めていない白い生地の時点で、すでに優しい。他の趣味性の高い実用品を見渡してみる。ガラス、陶磁器、木工、金属はみな固い素材だ。

やわらかく白い生地を手に包みこむようにして触れながら作っているとき、布の優しさを手から受け取っており、受け取った優しさは貯蓄されてきて、さてどうしよう、と頭のどこかで思い続けている気がする。物理には質量保存の法則というのがあるが、優しさも消失しないのでその優しさの容量はまたどこかに納めることになると考えている。

絞り染めの模様や色がどうであったらいいのかを考えるところから私の制作は始まっている。絞り染めのデザインについて考えるということは、布から受けた優しさをどのように布に納めるのか、ということを考えているのと同じではないだろうか。どうだろうか。フンワリしたまま終わる。それではまた。