令和5年5月21日(日)イギリスの絞り染め作家と『「いき」の構造』

イギリスの絞り染め作家/研究家であるジェーン・カレンダー氏は日本の絞り技法を学び、技法を組み合わせて独自の世界を表現しています。作品集のような研究書のような「stitched shibori」(※フランス語版は「nui shibori」)を購入し本を開いたとき、日本の絞り染めとは明らかに違うアプローチに平手打ちを食らったような感覚を覚えました。絞りだけれど、日本の絞りと違う美しさを感じます。

ところで最近『「いき」の構造』を読みました。とても面白いです。この本の著者、日本の哲学者である九鬼周造(1888 〜1948)は「いき」という日本的な美的感覚を言語化しています。人間がものを美しいと感じる現象は一体どういう仕組みなのか?ということを、本を読みながら、自分の感覚と照らし合わせながら具体的に考えることができます。そうすると、絞り染めは「いき」そのものではなく、まあ、だいたい隣くらいにある表現方法だと思います。いきの構造の中に模様染めの技法に限った言及はありませんがひと通り読んでみて「いきな染め物の模様はどんなものか?」と想像すると、生産数の多い技法でいえば「型染め」なのではないかと思います。

しかし、絞り染めの新たな一面をイギリスの作家が見せてくれたことにより、絞り染めの美しさというのが固定されているわけではなく、むしろ、そういう美しさというのは固定されないようにしていったほうが良いのではないか?という気がしています……漠然と。