令和5年3月6日(月)眼を染める

3月になりましたが、まだ寒いこのあたりでは梅も咲きません。4月のお花見が待ち遠しい。

最近は、毎月、絞りを一度は染色するという目標を達成できるようになりました。ちょうど一年前お米を研ぐことができなくなった時期がありましたが回復し、染色もできるようになりました。絞り作業はできても、染める作業はできないこともあります。作業が全然違うので、体や頭や時間の使い方も違ってきます。

染められない期間は一体なにをすればいいのだろうか……と数カ月モヤモヤしながら色んな人と話をしてみました。お米を研げない時期も毎日台所に立ち、りんごを剥いたりサラダの野菜を千切ったりしました。その間、毎日毎日「絞りを染めて、良い色をつくりたいなあ」と思っていました。

だんだんに野菜や果物の色がとても綺麗だということがわかってきました。スーパーで柿を2つ買ってきた秋の日、気持ちが落ち着いた瞬間がありました。その柿の色をじっと見ました。オレンジ色、橙色と思っていたけれどこれは柿色というべき、少し陰を感じる色でした。

お花見は何故シートをしいて、お弁当や甘いものなどの美味しい食べ物飲み物をたっぷり用意して楽しむのだろうかと小さい時から不思議に思っていました。

化学染料が導入される明治時代までは、染色はもっと時間のかかることでした。染めるということは、ゆっくりと色に浸りながら定着させることだと思います。

美味しいものを食べて、体を休めて楽しみながらお花見をするというのは、冬の間グレーのごくわずかの色相の世界で染められて休んだ静かな眼を、明るい鮮やかな色に染めることなのではないでしょうか。

新しいわくわくする発想を生むために、まずは布よりも眼を、溌剌とした色に染めること。意外にそれが大事なことかもしれません。

みなさんも楽しいお花見の時間をお過ごしください。ありがとうございました。それではまた。