令和4年12月10日(土)糸を探す

絞りに使う糸を探している。

絞るときは糸を強く引っ張るために力がかかる。強度が必要だから絞り専用の糸が存在しており染色材料の専門店で買える。私は絞り専用の糸はいまのところ使っていない。修行していたときは糸と布だけは支給されていたのでそのときは使っていた。自分で染めるようになった時、まずは専用の糸ではなく手に入りやすいもので出来るかやってみようと思った。その理由を書いておく。

私が使っているのは綿の手縫い糸で大きめの模様は20番という太さで、細かい模様は30番という太さの糸だ。絞り染め専用の糸は個人向けに売ってくれるところが少ない。

専用の糸は高いので材料費が高くなり、後になって作ったものを売るときに買う人が高いお金を支払わなければならない。つくりたいものが良くなるならまだいいけれど、そこはやってみないと全然わからないから、しばらくやってみようと思った。

絞り専用の糸は「丈夫で切れない」と書かれている。嘘ではないんだけれども、私はその強い糸でも切れてしまったことがある。絞りの糸を引っ張るときはグッと引っ張るのではなくゆっくりと「キューッ」という感じで優しく引っ張る。それが見よう見まねでできるようになると、むやみに切れなくなった。やってみたら、手縫い糸でも同じようなことが起きた。気が急いて変な力を入れて引っ張ると切れて、丁寧に引っ張ると切れなかった。

結局、糸はイライラしていると切れる。

修行をした着物屋さんの私についてくれたコーチはとても優秀なベテランだったが「絞りの糸も大事に使ってね。なかなか糸を作ってくれるところもなくなってきて…大変なの。」と言った。聞きながら、絞りながら、何が大変なのだろうと考えた。彼女はその時苦しそうだった。その瞬間だけは、伝統工芸の先の暗さしか見ていない感じの顔をしていて、私は明るいことを考えたいから、うっすらと拒否感を覚えてしまった。

たぶん自分ではどうにもならない、他人の都合で自分の仕事が変化してしまうかもしれない怖さ。不安だと思う。

話はわかるが、なるべくそういう状態に陥りたくはないなと思った。気持ちよく作れないものは嫌だ。

最初、極端に安い糸も使ってみたがそれはだめだった。一般的な糸メーカーの手縫い糸の3分の1くらいの値段だったのでそれは仕方ないと思った。何がだめだったかというと縫っているときに全くしなやかではなく、染めたあとに糸がすごく細くなっていたからだ。糊のようなものをたくさん使って無理矢理太くしていたのかなぁと思った。

糸って、ミシン縫製の糸は現在ほとんどポリエステルになっていて、ポリエステルは強度があり切れにくいからだが、ポリエステルも使ってみたがあまり合わなかった。防染は問題なくできるが私の手との相性が悪く、絞るときと最後の「かもさげ」のとき、糸のハリが強すぎてやりにくかった。

今細かい模様の絞り具合が今一歩で、かなり良くなってきたので、もう少し合う糸を探している。ミシンでジーンズをステッチするような綿の糸を使ってみようと取り寄せたところ。そういう糸なら絞りをする人口よりは使う人が多いから安心。それでもあまり良くならないようなら、いよいよ絞り専用の糸を買ってみる。結局そこにたどり着く可能性もあるとは思う。

とにかく試行錯誤の最初は旅をすることが必要だと直感的に思っていて、今は特に糸のことを考えながらやっているところ。