なぜ草木染めの色に親しみを覚えるのか【前編】(そして、透明感について)

今日書こうと思うお話は、私の思い込みの可能性だってかなりあるんですが、まずはお話してみます。色の話です。

草木染めと化学染料を両方使っています。その時作る模様や布の用途を考えて、合う染料を決定しています。

その中で草木染めの色は、染めた瞬間、絞りの糸を解かないまま布をひと目みて「いい色だなあ」と思うことが多いです。
化学染料だってそういう「いい色」になることはありますが、ちょっとの具合で色がキツめになってしまうケースも、正直言ってあります。


では「いい色」って一体、なんでしょうか?絵に塗った色や、着てる服やアクセサリーに対して、いい色ですね〜!と言ってもらうと、言われた方は悪い気がしません。何がどう良い色なのか、仮にそれ以上会話が掘り下がらなくとも、なんとなく納得してしまう、魔法的言葉。

私のこれまでの経験では、草木染めの「いい色」とは「親しみを感じるような」色だと思います。
草木染めは鮮やかな色であっても、どことなく柔らかくって気持ちが落ち着くような色なんですよね。
もともと人間は、草木染めの色のようなものに抱かれながら生まれたのかな?と思ったりします。
それくらい安堵する色というか。


それから草木染めの色は透明感があります。
この言葉も不思議です。
ちょっと話が逸れますが芸能人の容姿とかにも使いますよね、「透明感」。
あとは、「メイクの仕上がりに(化粧)に透明感がある」とか。
人間は透明なものじゃないのに、透明感と表現するのはなんだか不思議でもあります。
何となく伝わるけれど、一体なんなんだ?「透明感」って?ということを考えてみたくなりました。


ポイントは、光なのではないか。
色とは、ものに光が当たったときに特定の光を吸収し、また別の特定の光を反射することで色として見えるという仕組みになっています。
光の向こうには、ものが見える。
光や水や空気には透過性があります。

草木染めで染めた色は光や水や空気のようで、布の風合いがとくに生きる、透過性のある色だと感じます。

では、人間に対して使われる透明感という言葉の表す意味はなにか。
肌や髪の質感が覆い隠されずきれいに見える状態から醸し出される、そこはかとない良い雰囲気。
そのような感じなのではないでしょうか。


今回は草木染めの色から「透明感」を考えてみました。
次回は、色の生命とは、ひいては生物とはなにかを考えてみます。


色についてブツブツと考えることが多いので今度、「色」カテゴリを作ろうと思いました。
それでは、今回もありがとうございました。